バリアフリーマップ
今年初めから車椅子介助をする「ほのぼの広島会」という
ボランティアグループに参加しています。

この会では、広島の障害者用トイレ一覧を載せたバリアフリーマップを作っています。
それを見て、車椅子で観光地を訪ねる際に参考になるマップも
あればいいのではと思い、提案させていただいたところ、
「やりましょう!」ということで、早速それを作ることになりました。

障害者用トイレのバリアフリーマップはカラーで印刷されたきれいにものですが、
私が作りたい観光地案内のバリアフリーマップは、
まずはインターネットで閲覧できる訪問記のようなものです。

今日はそのためのプレ調査ということで、
福祉車両をお借りして広島市内の観光名所を回ることにしました。


まずは古市というところにある広島市安佐南区社会福祉協議会に行き、
福祉車両「うさぎ号」をお借りします。
そしてそれに乗り、広島市内のはずれにある会員の迫田さんのお宅に向かいます。

迫田さん宅に到着すると、
迫田さんをいつも介助されているヘルパーの伊藤さんも待機しておられました。

伊藤さんに、一昨日習ったばかりの車椅子リフトの使い方を説明し、
伊藤さんにリフト操作をしていただきます。



電動車椅子に乗った迫田さんも、
車椅子に乗ったままで車に乗り降りすることが可能です。



車椅子にブレーキをかけ、前後に飛び出さないようにストッパーが立ち、
車椅子本体はフックの付いた電動ベルトで締め上げます。

車椅子がしっかり固定されたのを確認し、広島市内中心部に向けて出発です。
今日は祭日の土曜日なので、市内への道は少しだけ渋滞していました。


広島駅新幹線口で今回同行してくださる山野さんと合流し、
平和記念公園へと向かいます。

平和公園の守衛さんがおられる入り口で、福祉車両であることを告げると、
事前の申し込みはしていないのですが、車で入場することを許可してくださいました。

守衛さんのおられる入り口は、下の地図の所です。


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公園内に入ると、別の守衛さんが手招きし、
原爆資料館(広島平和記念資料館)南側の駐車スペースへと案内してくださいました。
駐車料金は無料です。
  <広島平和記念資料館>



車椅子リフトの使い方はとても簡単で、力もまったくいりません。
伊藤さんはすぐに慣れてしまわれました。



資料館で、私を会に誘ってくださった帯子さんと合流しました。

資料館の建物に入り、まずは障害者用トイレのチェックです。
資料館の入り口向かって左手にトイレがあります。



押しボタンでドアの開閉ができるとてもきれいなトイレです。



音声案内が備わっていて、センサーに手をかざすと、
それに反応して音が出る仕組みになっています。



帯子さんは原爆資料館には怖くて入ることができないとのことなので、
資料館には4名で行くことにします。

一階入り口を入ると、すぐ左手にエレベーターがあります。
資料館にあるエレベーターはこれ一基です。
東館一階の展示を見て、このエレベーターで二階へと昇ります。



きれいな整備された資料館にはどこにも段差がなく、
スムーズに移動することができます。



ただ一基しかないエレベーターのある場所に戻るため、
若干行きつ戻りつする必要があります。

こちらは本館の展示室です。
後ろにあるのは被爆直後の様子を再現して展示したものです。



本館の展示を一通り見たら、この長い通路を通り、
途中から階段を下って外に出ることになっています。



けれど車椅子の場合、この通路を突き当たり、右に折れ、
本館に入ってすぐの場所まで戻ることができます。
つまり丸くぐるっと一周するということです。

通路の途中から、慰霊碑、原爆ドームをバックに記念撮影です。



平和公園の中を車椅子で回ることにしました。
石畳にはほんの少し段差の付いているところもありますが、
そんなところでも、ちゃんと横にはスロープが付けられています。





石畳はツルツルしていて滑らかで、車椅子も快適に走ります。



ここらは私がいつも私がガム取りをしているところです。
こんなところでもガムを吐き捨てる人がいるのです。
けれど石畳は表面がツルツルなので、ガムを取るのはとても楽です。

被爆建物であるレストハウス横には公衆電話ボックスが設置されています。



中は広く、入り口の扉は軽い力で開閉できるので、
車椅子に乗った方でも楽々と出入りすることができます。



ここは資料館と原爆ドームの真ん中あたり、地図をご参照ください。


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レストハウスでしばらく休憩し、レストハウス南側の公衆トイレに行ってみます。
そこに行く通路もなだらかなスロープになっています。



ここは今年の1月、公衆トイレ掃除の会で掃除したとこです。



平和公園は、建物の外だけでも5カ所に公衆トイレがあり、
そのすべてに障害者用トイレが付設されています。



どの障害者用トイレにも非常呼び出しボタンが壁にあるのですが、
これが高いところにあると、万が一転んだ時、
這いつくばった状態では手が届きません。
ここは少し位置が高すぎるとのことでした。

元安川にかかる元安橋を渡り、レストハウスの対岸、
原爆ドームの南側に来ました。
ここにはしゃれたオープンテラスのカフェレストランがあります。
  <Caffe Ponte カフェ ポンテ>



この前の河川敷から遊覧船が出ているのですが、
スロープがないため、車椅子で下に降りることができません。



下の石段にだけスロープがあるのですが、それではまったく役に立ちません。

ここからは宮島に行く船が出ていて、
宮島の方はバリアフリーになっているのですが、
途中一カ所でもバリアフリーでないところがあれば、
車椅子の人は利用できないのです。



対岸にはレストハウスが見えますが、あちら側には長いスロープがあり、
下に降りられるようになっています。



この石段は、車椅子の人の前に立ちはだかる巨大な壁です。



原爆ドーム横の河川敷にも船乗り場がありますが、
ここも石段を降りなければなりません。



原爆ドームの周りは車椅子を押していても快適です。

原爆ドームをバックに写真を撮っていると、
通りかがりの白人男性が、カメラのシャッターを押しましょうと自ら申し出てくれました。
五人全員での記念撮影です。 Thank you very much.



原爆ドーム北側の原爆ドーム前電停は、
先日ホームページでもご紹介したように、軌道敷内が緑化されています。
この電停ホームは緩やかなスロープになっています。



広島電鉄の市電はたくさんの種類の車両がありますが、
普通の車両は車椅子のまま乗ることはできません。



時折低床型のグリーンムーバーが来るのですが、
これならホームから車内へ車椅子に乗ったまま移動することが可能です。



今後広電はこのタイプの車両が増えるそうです。

原爆ドーム東横に公衆トイレがあり、
ここにもきちんとした障害者用トイレがあります。
ここは利用者の多いところです。




平和公園から歩いて5分ちょっとぐらいのところに旧日本銀行の建物があり、
そこではよく様々な展示会が開かれているので、
そこに行くことにしました。

その途中にアストラムライン本通駅に通じるエレベーターがあるのですが、
ここは車椅子の人にとってかなり危険なところです。



エレベーターから後ろ向きまま車椅子に乗って降りると、
階段の際のかなり狭いスペースで方向転換しなければなりません。
しかも床は点字ブロックでデコボコしていて、
階段も朝夕かなりの人が上り下りしています。



いくら危険性を示す掲示物が貼られていても、
それで安全になるわけではありません。
かといってすぐに改善策が打てるわけでもなく・・・、
大きな課題です。


旧日本銀行広島支店は風格のあるきわめて立派な建物です。



場所はここです。


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今日は現代アートの催しをしていました。



以前は正面に黒いものものしい木製スロープがあったのですが、
今は撤去されています。
けれどその代わり、正面裏手の東側入り口にスロープがあるとのことです。

たしかに裏手に立派なスロープがありました。
こちら側も何度か来たことがあるのですが、
つい最近改装されたのですね、気がつきませんでした。
一同ビックリです。



スロープのお陰で難なく東側入り口から入ることができました。
着実にバリアフリー化は進んでいます。



展示は一階と地下で行われていて、
一階と地下はエレベーターで行き来します。



地下には昔使われていた巨大な金庫室があり、
それもいつでも見学することができます。

帰りもスロープを通って電動車椅子でスイスイと行けました。




近くのレストランでお昼ご飯を食べた後、
再び車を止めている平和公園の駐車場に向かいます。

途中にある横断歩道の段差はわずかなものですが、
それでも車椅子の人にとっては、気合いを入れて進まなければなりません。
なかなか普段は気がつかないことです。



福祉車両うさぎ号のところに戻り、
リフトを使って車椅子を上に上げます。
迷うことなく簡単に操作でき、本当によくできた装置です。




車に一行五人が乗り込んで、次なる目的地は縮景園です。
風光明媚な縮景園は、平和公園から車で10分もかかりません。
  <名勝−縮景園|広島市中区上幟町>

縮景園南側の駐車場は、障害者手帳を提示すると、駐車料金は無料となります。



縮景園はここにあります。


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入場料は大人250円、障害者手帳を持っている方と介助者一名は無料です。



縮景園は梅、桃、桜にはじまって、四季折々いろんな花が咲き、
茶会なども催されます。

ここを訪ねるのは二十年ぶりぐらいですが、
園内に入るとほんのりと花の香りがし、よく手入れをされた木々や草花に囲まれていると、
とても穏やかな気分になってきます。
縮景園の外の街中とでは空気がまったく違います。



園内を散策する道は風情がありますが、
大きな石で作られた段差が各所にあり、
車椅子で通るのにはかなり苦労します。





園内中心にある池にかかった橋を渡るにも一苦労、
電動車椅子の場合、女性介助者一人では通ることは難しいでしょう。





橋の上に乗ってしまえば、なんとかゆっくりと車椅子で通ることができました。





橋を渡りきった対岸でもやはり一苦労です。



池の周りを案内板通りに反時計回りに進んだのですが、
少し行ったところで、車椅子では通れなくなってしまいました。



来た道を再び引き返します。



今度は時計回りに池の周りを進みましたが、
こちらもやはり車椅子では通れません。



大きな石段を乗り越えたとしても、
その先には車椅子の幅より狭い橋がかかっています。



池のほとりで記念撮影、
少ししか移動できなくても、風情ある縮景園はただそこにいるだけでハッピーです。



池にはたくさんの鯉が泳いでいます。
けどつい鯉よりも亀の方に目が行ってしまいます。
これは大きなミドリガメですね。



ミドリガメ(アカミミガメ)は外来種ですが、
ペットとして飼い、大きくなって飼いきれないものを多くの人が池や川に放し、
全国各地で大繁殖しています。

カメラを斜めにして、亀と一緒に撮りました。





池の中にはいくつもの島が浮かんでいて、
それぞれ鶴や亀の形をしています。



こっちの亀島には本物の亀が甲羅干しをしていました。



今度は橋を渡る手前を池沿いに回ったのですが、
木で作られた橋のところでストップしてしまいました。



車椅子のハンドリムが、どうしても橋両脇の木に当たってしまいます。
あとほんの数センチ ・・・ 、残念です。



昔ながらの日本庭園、
散策する道を風情あるものにするか、バリアフリーにするか、
難しい選択です。

一番外側の道を進みます。
ここも大きな木々が建ち並んでいますが、
やはり池が見えていた方が心和みます。
水は人の心を癒やすのですね。



こちらも途中で車椅子では進めなくなりました。



お茶会も開かれる旧日本家屋清風館の前でハイポーズ。



縮景園の入り口を入ってすぐ左手、
女子トイレの建物とともに障害者用トイレがあります。





ここもきれいな設備が整っています。



その隣が泉水亭という売店です。
バックした状態で、電動車椅子が自力で入ろうとしましたが、
なかなか上手くいきません。



何度もトライしているうちに、前輪が砂利の中に埋まり込んでしまいました。
やはりちょっとの段差も車椅子にとっては大きな障害です。



入り口付近にあった亀の置き石、
この縮景園は、亀がトレードマークのようです。



楽しかった縮景園を後にします。
みんな大満足です。



出入り口の石段はほんの少し段差がありましたが、この程度でしたら大丈夫です。




平和公園、旧日銀、縮景園、今日のバリアフリー調査の全日程が終わりました。
帯子さんと山野さんをお送りし、最後に迫田さんのお宅まで車を走らせます。



迫田さんのお宅では、可愛い二匹のダックスフンドがご主人様の帰りを喜んで、
キャンキャン大騒ぎしていました。




みなさんお疲れ様でした。
今日は普段車椅子に乗らない人間では気がつかない多くのことを知ることができました。

調査して分かったことを、
現在作成中のほのぼの広島会のホームページにひとつのコーナーとしてまとめ、
多くの観光地のバリアフリー情報を、
広島を訪ねてみたいと思われる障害を持った方たちに提供していきたいと考えています。

真の国際平和文化都市を目指して、
顔晴りま〜す♪

2012.9.22 Saturday


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