冬瓜
数日前、老夫婦の暮らすお宅にお伺いすると夕餉の支度の最中で、
鶏肉のいい香りがしていました。
お隣のご親戚から冬瓜をもらわれたそうで、
その冬瓜と鶏肉のミンチを入れたスープを作っておられます。

香りはとてもいいのですが、
「冬瓜は味がないから、私はあんまり好きじゃないのよね〜♪」
とにこやかにお話をされています。

しばらくするとそのスープが出来上がり、
私も一口食べさせていただくことになりました。

鶏肉の油の浮いたスープは熱々です。
スプーンで真っ白な冬瓜を小さく切り、
ほんの少しのスープとともに口の中に入れたのですが、
お恥ずかしい話、あまりの熱さに一度口に入れた冬瓜を再び口の外に出してしまいました。
口の中がやけどをしてしまうほど熱々だったのです。

冬瓜は瓜科の植物で、
中の白い実はカブか大根のようでサクッとした歯ごたえが魅力です。



たしかに食べてみると冬瓜は水っぽくて味がないですね、
けれどもその歯ごたえだけでも十分に楽しめます。
ウィキペディアには
『実は、成分的にはほとんど(96%)が水分で、味はほとんどなく、
煮物、あんかけ、酢の物、スープ、蒸し物などとして他の味を含ませる料理に用いられる。』

とあります。

あまりに熱いそのスープはこのままでは食べられませんので、
数分間冷まし、適当な温度になったのを見計らって再び口にしました。

少し時間が経ち、冬瓜も心持ち柔らかくなっています。
その冬瓜を口に入れて一口噛んでみてとても驚きました。
冬瓜が数分前とは比べものにならないぐらい味が浸みて美味しくなっています。

鶏肉のコクのある味わいが、
冬瓜の歯ごたえとほんの少しの野菜の香りにのって最高の味わいです。

「いや〜、これは美味しいですね♪ これはもう料亭の味わいですよ♪」
心からそう感じ、そんな言葉が口から出ました。


料理の味は、冷めていく時に野菜に浸みて美味しくなります。
そのことを知ったのは、今から14年前の新聞記事です。
  <保温調理法で煮る>

何事も理論を解明したい私はこの保温調理法にとても興味を持ち、
この新聞記事をたくさんコピーして人に配り、
また本を買って勉強もしました。

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カレーやおでんなどもこの保温調理法で作ると簡単に美味しくできます。
手間いらず、光熱費の節約にもなってしかも美味しい!
こんな素晴らしい方法は知らないと損ですね。

ぐつぐつ長時間煮込むと鍋からはいい香りが漂ってきます。
これは美味しくできているということではなく、
鍋の中の料理から美味しい香りが抜け出ているということです。

最初の短時間煮込み、その後すぐに火から下ろして長時間冷ましていくと、
鍋から料理の香りは出ていきません。
美味しい味と香りは料理の中に染み込むのです。


この保温調理法のことを、
冬瓜のスープをいただいて久し振りに思い出しました。
またこんなに短時間でその味の染み込む効果を感じたのは初めてです。

保温調理法のことを考え、
この『味は冷めていく時に染み込む』という法則は、
実に深い意味を含んでいるものなのだと感じました。

いいアイデアが最もひらめきやすいのは、
徹底的にそのことを学び、その後でリラックスした時だと言われています。
アルキメデスは、お風呂に入っている時にアルキメデスの原理のヒントを思いついたというのは、
とても有名な話です。
湯川秀樹博士も、寝ている時に思いつくアイデアを逃さないために、
枕元にノートと筆記用具を置いていたそうです。

人の人生も苦労を重ね、
その後になってその時積み重ねた苦労の意味が分かるということがよくあります。

料理は熱くするということとともに、冷ますところに極意がある、
これはやはり陰陽の基本です。
そしてすべての身の回りのことにも関連づけられ、応用の効く真理です。

ひとつのことを知ると、無数のことに活かすことができます。


この時空にあるものはすべてフラクタル(自己相似形)、
似たものを探し、その関係性の中から深い真理を感じ取る、
これがこれからはじまる陰の時代の本質です。

2011.12.29 Thurseday


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