心のこもった言葉
心のこもった言葉ありがとう、おかげさま、おせわさま、
美しい意味と響きを持つ言葉が日本語には数多くあります。

文字、音は形をあらわす表の世界、
その裏に心がこもって初めて言葉としての輝きが生まれてきます。
毎日、毎日、一日も欠かさずに使う言葉、毎日使う膨大な量の言葉の中には、
ただ習慣になったかの様に口から無意識に出て、
まったく意味を考えずに使っている言葉もたくさんあります。

普段使っている言葉の意味を考える、
時にはそういう作業も必要かもしれません。


ある美容室でのお話です。

そこの店では、お客様がいらしたら、
大きな声で「いらっしゃいませ」と挨拶をします。

お帰りの際には、
「ありがとうございました」、「お気をつけて」
声をそろえてお送りします。

しかしどんなに素晴らしい言葉でも、「決まり文句」になってしまっては、
その裏側にあるべきはずの感謝、いたわり、思いやり、
そんな気持ちが薄れていってしまいます。

そこでその美容室では、
週に一回、その「決まり文句」を使わない日を設けました。

お客様に対してどんなご挨拶でお迎えし、お送りするかは、
各自が考えます。

「こんにちは、どうもお久しぶりです。 お元気でしたか」
「今度来られる時は、桜の花が咲く頃ですね。 お待ちしております」

ひとつひとつ、そのお客様に合った言葉をさがす、
この作業を通して、本来持つ言葉の意味、
心の中の思いを伝える手段として言葉の役割に目覚めるのです。


「爪もみ健康法」、毎日楽しく実践しています。

湯舟の中、一日の感謝の気持ちを込めながら、
二十本の指、一本一本に言葉をかけていきます。

「ありがとね。今日も一日お疲れ様」

けれども「心を込める」ということは、本当に難しいことです。

足の指一本を揉みながら、今日はこの指のお陰で、この指があればこそ、
という思いにはなかなかなれません。

ただ呪文のように
「ありがとね、ありがとね、ありがとね・・・」
を繰り返し唱えるだけになってしまいがちです。

前々からそのことが気になっていたので、
今日は指を揉みながら一本一本の指にすべて違った感謝の言葉をかけてみました。

「今日は重い荷物を持ったよね、しんどかっただろ、
 ありがとう」
「自転車で坂道を登った時、ペダルをしっかり踏みつけ、
 よく踏ん張ってくれたね、ありがとう」

その日一日、指に負担をかけたこと、
指にお世話になった様々な事柄が頭の中に浮かんできました。

言葉の意味を深くさぐり、考える、これは心の奥を観る、一種の内観ですね。

言葉に心を込めるということは、
言葉の意味を深く考えるということと、同じことなのでしょう。


言葉を大切に使うことで、心の世界も広がってくるようです。

2004.11.19 Friday




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