科学的分析と統合的感覚<2>

今朝、将棋界の若きヒーロー藤井聡太七段(17歳)が、最強将棋ソフトの能力に匹敵する読みをしていたという記事を目にしました。
藤井聡太七段(17歳)最強将棋ソフトが6億手以上読んでようやく最善と判断する異次元の手を23分で指す(松本博文) – 個人 – Yahoo!ニュース

藤井聡太七段

将棋に於いて、今は名人級の将棋のプロよりも高性能なコンピューターソフトの方が実力が上であるというのは常識です。
それは最善手となる一手を過去のデータから絞り込む力が優れているのではなく、圧倒的処理能力によってすべての手順をくまなく考察することができるからです。

上の記事には、渡辺明棋聖に挑戦する第二局に於いてコンピューターが4億手読んでも発見できず、6億手以上を読み込んで初めて発見できた最善手を、藤井七段はわずか23分で読み解いてしまい、これを彼が持つ素晴らしい“大局観”だと評しています。

将棋ソフトはただ闇雲に手筋を追っているのではなく、ある程度有効なものを選別して先の読みをしています。
つまりその能力は質(有効性)と量(処理能力)とのかけ算です。

人間の持つ大局観はこの質の部分であり、これは先に述べた統合的感覚と同じで、優秀な人間はこの大局観が圧倒的に優れています。

将棋ソフトにもそういった能力を持たせるよう努力はされているのでしょうが、これを目に見える、形ある論理や方程式にすることは不可能です。

9×9マスの盤上に四十枚の駒を並べて競う将棋の世界ですら人間の持つ大局観が大きく際立つのですから、これが周りと深い関係を持つ開放系の事象ならなおさらです。

複雑であいまいさを持つ事象を臨機応変かつ統合的に捉えることができるのは、生身の人間の持つ最も大きな特長です。

その大局観を持つために一般的に言われているのは、はじめは徹底して知識や情報を詰め込み、それが潜在意識で熟成されるまで静かな時を待つということ。
最近はマインドフルネスという瞑想法がよく話題になりますが、これもその方法です。

合気道では、最初に技を覚えて次にその技を忘れろと言われています。
これは顕在意識下にあるものを潜在意識に落とし込むということを意味しているのでしょう。
大局観は潜在意識から導かれるもの、けれどそれ以前に顕在意識にその材料となるものが入っていなければなりません。

これは考えるのではなく感じる世界、ブルース・リーの「Don’t think. Feel!!!」(考えるな、感じろ!)の世界です。

結論は再び同じです。
科学的分析と統合的感覚、どちらが優れているかではなく、この二つを上手く使い分け、付き合っていくことが本当の知恵となるものです。

世界最高の処理能力を持つスーパーコンピュータが出した結論だからと言って、それを盲信するのは禁物です。